空想と現実と。エクセルシオの気ままなブログ。
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沈黙
≪読書感想 『沈黙』≫

ああ、もっと早くに読んでれば良かった・・・と思う小説がある。これもそのひとつ。頭をハンマーで殴られたような衝撃と、猛烈な感動。すごい小説だと思う。

キリストの受難・・・それを日本を舞台に再構築してみせたような本作。信仰心がない僕は、そこに食わず嫌いをしていたけれど・・・考えられるありとあらゆる葛藤のなか、主人公ロドリゴ神父が信仰・・・そしてそこから生まれる慈しみの心を保とうする姿には、垣根を越えて深く感動させられるものがある。

さて、神の沈黙・・・そんなのが題材だからきっと重くて読みづらい小説なんだろうな、と思っていたら。意外なくらい、読みものとしてグイグイ読ませる。主人公の葛藤が重層的に描かれていくさまは、ミステリー小説を読むかのように引きつけられていく。始めは日記風なのがまた効果的で、物語に入り込み易い。
けれど、三人称の文体になってからは冷徹なぐらい客観的。たとえば主人公の行動を自尊心からくるものだと分析したり・・・信仰に対するあらゆる問いかけをし、また主人公に寄り添いながらも遠巻きに眺めたような描写は、作者はほんとにキリスト教徒なの?!と思いたくなるぐらい。宗教に懐疑的なぼくが、普段疑問に思うようなことがバシバシ投げかけれていく。驚いた。冷静な宗教論としても面白い。

極限にまで悩み、その先に見えたもの。それをなんといっていいのだろう?小説は結果的に一つの選択をさせるけれど、どちらを選んでも正解はない、どちらも悩み続ける道。苦い味が口中に広がるような読後感、それでも不思議と温かさのようなものもある。
それを妥協という人もいるかもしれない。しかし・・・ぼくはそこに苦しんだ果てだからこそ得られる、真の信仰、そして救い・・・そんなものを感じた。

その嘘のなさに魅かれるのかもしれない。

沈黙
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テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

暗闇のスキャナー
≪読書感想 『暗闇のスキャナー』≫

「麻薬」が題材になったものには、あんまり魅かれないのだけれど。
それでもこれは、ドラッグものと切り捨てるには惜しい魅力を感じた一作。どちらかというと、ディックお得意の「現実崩壊もの」な気がする。それもとびきり強烈の。

ストーリーらしい、ストーリーはなくて。ジャンキーの日常を淡々とスケッチしていく感じ。・・・なので始めはとっつき難さを感じたものの、そのディティールが詳細なので少しずつ引き込まれていく。

この小説でちょっと面白いな、と思ったのは。「キメた瞬間」だけでなく(こういうのって、いい加減食傷気味)、ドラッグの服用によってもたらされる「現実への不安」に筆が割かれていること。

日常のちょっとした不安感が、ドラッグのせいでどんどんどん増していく。潜入捜査官である主人公が、ジャンキーに混じった「自分自身」を監視しなければならなくなる・・・という特殊な状況が、それをさらに増大させる。じわじわと物語は進むけれど・・・気がついたときには、主人公はアッという間に現実からズレてしまう。ジャンキーである当人はそのことに気がつくわけもなく(まさにミイラ取りがミイラに)。そこが強烈だった。怖かった。

エピローグや主人公の恋人のドナのキャラクターには甘さを感じたものの(どっちも都合が良すぎる)。ジャンキーへの等身大の目線の、悔恨の情に満ちた「あとがき」には泣けた・・・。ドラッグものという枠を超えて、なにか突き刺さるものがある小説だった。

暗闇のスキャナー

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