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世界最速のインディアン
【映画感想】
世界最速のインディアン
"The World's Fastest Indian"

世界記録に挑戦した生粋のバイク野郎の実話。
バイク、スピード、限界への挑戦。ずばり!好みな題材。ただ、演出は手放しでは誉められない。この映画はエピソードのひとつひとつが「いい話」に収束してしまう(ほんの少しの例外を除く)。これには初め乗りづらかった。出てくる人出てくる人、みんな結局いい奴ばかり!監督曰く、全て実話に基づいているそうなんだが、いくらなんでも出来過ぎだろ!!とツッコミたくもなる(数年間に起こった出来事の中から、良さげな話だけをチョイスし繋ぎ合わせたと推測)。受けつけない人はとことん受けつけないだろう。ご都合主義と言われても無理はない。とはいえ、ぼくはこの形式を苦笑いしつつも受け入れてしまった。あまりに開き直りがいいと云うべきか。ここまでされるとアッパレ。それが理由の一つ。

それに加えて、この都合のいい話(よく云えばファンタジー)を受け入れられた理由。それは主人公バート・マンローという人物、そしてそれを体現するアンソニー・ホプキンスの魅力。これに尽きる。バート・マンロー、彼の夢に向かって突き進む執念はとにかくスゴイ。ものスゴイ。何しろ40年前のバイクをひたすらチューンアップし続け、世界記録を出せるバイクにまで育て上げたのだから。バイクとスピードに駆ける意気込みは半端なもんじゃない。これまたアッパレ。
とはいえ奇人変人(実際隣人にいたらさぞかし迷惑な人物だと思われ)、一歩間違えばその執念は狂気のキャラクター(なのでレクター博士ことホプキンス氏のキャスティングにも納得)。けれどそんな彼を魅力的にしている要素は他にもある。それはとってもお茶目でチャーミングなこと。そんな彼の資質は子供のような飽くなき挑戦心から生まれるのだろうけど、そこに老いが被さることによって深みのあるものを感じさせる。マンロー氏が世界記録に挑戦したのは齢63のこと。彼の分け隔てない人への接し方は、人生を知り尽くした者が持つ包容力も感じるさせる。ふと発する言葉には、時の流れと重みが含まれている。そういう時に見せるアンソニー・ホプキンスの表情が、渋みを感じさせ逸品。

老いると頑固になり狭い世界に閉じこもる人もいるが。でも例えば近頃のクリント・イーストウッド監督の活躍を見て思うのだけど、老いを味方につけ逆に外へ飛び出そうとする人のエネルギーには底知れぬものを感じる。それがバート・マンロー(&アンソニー・ホプキンス)にもある。この映画を観て、老いた者が持つ深みを感じても彼を老人と意識する人はいないと思う(ちなみにバートはモテるし恋もする。それも分け隔てなく。いや、見境なくか?!)。体は少々ガタついても一人の人間として凄い。それはバートがひたすら磨き上げ続けた40年前のバイク、インディアンに秘められた力と同じ。まさにバートとインディアンは一心同体!

ともあれ。こういう主人公だからこそ「いい話」に収束してしまう展開、みんないい奴!も許せたのだと思う。映画の中で、彼の周りにいつの間にか仲間が出来ている場面があるのだが、そのシーンがすんなりと映画に収まっている(練り込まれたエピソードよりも余程)。それともうひとつ。そういう場面で印象に残ったのが、バートが初めて悲願の地ボンヌヴィルで他の記録挑戦者と出会うところ。彼らは初対面。が、まるで面識があるかのように「記録に挑戦するにはいい状態だな」などと話し、そのあと始めて自己紹介を交わす。バートの人柄の魅力しかり。彼のスピードやバイクに賭ける執念しかり。それらがあればこそ、の場面の流れ。

さて、クライマックスはもちろん世界記録への挑戦。
真っ青な空の下、白い大地の上を、赤いバイクがただ一点を目指し疾走する。それまでタメにタメていたエネルギーが遂に解放される場面。それだけにそこには、えも言われぬ興奮、高揚感があり。・・・そして後に残るのは、ただただ清清しさ。バートの夢への情熱。そして彼を取り囲む人々の温かさ。
大分脚色された映画とは思うけれど。若くもない、孤高でもない、夢への挑戦者(書きそびれたが彼がニュージーランド人という点もミソ。彼ら独特の開拓者精神を"Kiwi Spirit"と呼ぶそう)の物語には、型枠はステレオタイプでも安易なサクセスストーリーとは違う魅力があり。何より、こういう人物のドラマを知れただけでも価値はあった(バート・マンローの根底にある精神はきっと現実も映画も同じ)。機会があれば自伝も読んでみたいものだ。


(追記)
実際のバート・マンローは結婚&離婚(そうだろうな、笑)の経験があり、4人の子供がいるそうな。ま、やっぱり映画は映画。でも生き様はしかと受け止めました。

世界最速のインディアン
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2007/09/29(土) | バイクfan
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